Netflixの品質管理(QC)について
目的:
ここでは、Netflixにおける3種類のQCについての概要を説明します。納品パートナーの皆さんに私たちの品質管理工程を理解してもらうことが重要であると考えています。また、より素晴らしい視聴体験を提供するために、よくある問題やBacklotの再納品リクエストについても触れます。
QCの種類:
- Catalog QC(カタログQC)
- 役割と範囲: 全てのコンテンツにおいてユーザーの視聴体験を守るため。内部のWebベースのプレーヤーを使用し、トランスコードされたファイルに対して実施。
- Master QC(マスターQC)
- 役割と範囲: Netflixオリジナル作品を最高の品質で提供するため。映像、音声の技術的品質の確認を行う。QCベンダーのシステム上で、ソースファイルに対して実施。
- Localization QC(ローカリゼーションQC)
- 役割と範囲: Netflixオリジナル作品を最高の品質で提供するため。スタイルガイド及び翻訳の一貫性の強化。社内ツールであるQC 2.0を使い、ソースファイルに対して実施。
カタログQC
カタログQCはストリーミング視聴体験を妨げる問題がないかを確認するためのものです。カタログQCチームはユーザー体験をシミュレーションした確認を行います。重要なポイントとして:
- 視聴を妨げる問題がないか(例:誤ったコンテンツが納品されている)
- タイトルの品質が著しく低くないか (翻訳の問題、誤字、ビデオノイズ)
- ライセンスコンテンツであることを考慮する (多様なスタイル)
納品及びインジェスト:
ライセンスコンテンツの納品及びインジェスト工程は次の3つの段階のカタログQCを通して行われます:
アセットのアップロード
自動QC/事前QC(IaaS)
マニュアルQC
工程のフローチャートは以下の通りです:
カタログQCの種類:
- スポットQC:
- 以下の部分確認を行います:
- 最初の2分
- 1分: クレジット近辺
- 1分: 50%
- 1分: 75%
- 最後の2分
- 以下の部分確認を行います:
- フルQC:
- アセットの全長確認を実施
- Netflixオリジナル及び注目度の高いコンテンツ(Netflixの判断による)
よくあるカタログQCエラー:
映像 | 音声 | 字幕 |
字幕焼付け(バラエティ) |
||
アイキャッチ・リピート再生(アニメ) |
検閲済みコンテンツ |
|
ブレンドされたフレーム |
||
マスターQC
マスターQCでは、ソースアセットの品質がNetflixオリジナル作品納品仕様書に則っているか、およびコンテンツの一貫性に問題がないかを確認するために行います。マスターQCはNetflixオリジナルコンテンツに限定して実施されます。マスターQCオペレータはソースアセットに対して全尺の確認を複数回実施し、コンテンツの一貫性が保たれていない問題に対してフラグを立てます。
マスターQCは一貫した環境(例:4Kコンテンツは4Kで、HDコンテンツはHDで確認)で、以下のアセットタイプについて実施されます:
- プライマリ A/V IMF/ProRes
- セカンダリ 吹き替え音声
エラーチェック
マスターQCエラーコードは以下のように分類されます:
- 技術的仕様: フレーミング、アスペクト比、画像レベル、音声ラウドネス、ピークレベル、フォーマットなど
- コンテンツの問題: 撮影機材やスタッフの映り込み、デッドピクセル、フレームの欠落・複製、音声ノイズ、焼き付け字幕など
最終的には、マスターQCは制作やポストプロダクションの過程において引き起こされた問題を確認し、修正するために実施します。全長QCで、必要に応じてコマ送りで確認等を行いながら問題がないか検査します。
Netflixオリジナルの大部分はNetflix推奨ベンダーによって品質管理が行われます。すべてのエラーコード及びレポートは内部で確認を行い、その問題への対応が可能かどうかを検証します。実行可能なレポートはフルフィルメントパートナーとコンテンツパートナーの両方に共有されます。
納品前にマスターQC NPVを活用することで、NetflixにおけるQC認証の確率は高まります。
固定のレートカードはNPVウェブサイトに記載されています。
なぜマスターQCを行うのか?
- ユーザーの視聴体験を損なう問題を指摘し、修正するため
- オリジナルのクリエイティブ意図から離れた問題を指摘し、修正するため(ブームマイクやテープマーク、スタッフの映り込みがクリエイティブな意図ではないのは明らかです)
- Netflixオリジナル作品の納品仕様並びに技術基準に沿っていることを確認するため
よくあるマスターQCエラー:
- ピクセルエラー
- アニメーションエラー
- フレームエラー
- 撮影機材の映り込み
- 圧縮による問題
- 合成エラー
- オーディオノイズ
- 輝度シフト
- 量子化
- アイデント - ピークレベルが低い
*マスターQCエラーコードとその深刻度についての完全なリストはNetflixオリジナル作品マスターQCの概要ドキュメント内にあるMezzanine QC Errors & Severityドキュメントを参照してください。
QCレポート - エラーコード深刻度及びアクションアイテム:
- FYI(情報まで) - 問題ではないかもしれないが、目を引いた事柄 -再納品にはなりません - 特にアクションは不要です。
- Needs Review(確認が必要) - ユーザーには気づかれないかもしれない主観的な事柄 (主観的な翻訳問題や発音の違いなど) - 再納品になります - スタジオに内容を確認してもらい、どう扱うかを判断してもらいます。Netflixはスタジオの対応に対して確認や承認は行いません。
- Needs Fix(修正が必要) - 客観的な翻訳の問題、ユーザーが認識するであろう技術的問題(誤った固有名詞の使用、ユーザー体験を損なう可能性のある客観的な翻訳問題、その他、品質に対する悪影響やクリエイティブな意図ではないもの) - 再納品になります - スタジオ・NPVは修正を実施し、再納品する必要があります。
- Blocker(ブロッカー) - Netflixのサービス上で視聴するに堪えない、もしくは非常に貧弱な体験となる問題(誤った言語、吹き替えの欠落、タイミングの不一致、攻撃的・軽蔑的な言葉遣いなど) - 再納品になります - スタジオ・NPVは最優先で修正を実施し、配信開始前に再納品する必要があります。
ローカリゼーションQC
ローカリゼーションQCは翻訳の品質や一貫性、スタイルガイドに合致するかを確認する言語QCです。Netflixオリジナル作品に対して実施され、QCオペレータが変更の提案を行い、QCベリファイヤが内容を確認し、修正を実施する工程も含まれます。
ローカリゼーションQCは以下のアセットタイプに対して実施されます:
- 吹替え & 音声解説スクリプト
- 字幕
- 強制字幕
ローカリゼーションQCワークフロー - QC 2.0
字幕アセットは社内ツールであるQC 2.0を使用します。同期の確認で会話のイベントが波形と共に表示され、言語QCが実施されます。
字幕ファイルに対する修正はそのツール内で直接行われ、修正点はBacklot上のローカリゼーションQCレポートによってフルフィルメントパートナーと共有します:
この"Link to the Localization QC Report" をクリックすると、変更履歴にアクセスすることができます。変更履歴にはローカリゼーションQCがこのファイルに対して行ったすべての修正が記されています:
ローカリゼーションQC - メトリックス評価:
各アセットタイプのエラー率は以下の通り定義されます。
- Subtitle error rate:
- エラーのあったイベント数 / イベントの総数
- Language error rate:
- 翻訳エラーのあったイベント数 / イベントの総数
- Technical error rate:
- 技術エラーのあったイベント数 / イベントの総数
- Audio error rate:
- オーディオフラグの数 / 総尺
これらのメトリックスは累積し、ローカリゼーションQCが行われるNetflixオリジナル作品のアセットを納品するフルフィルメントパートナーとの会話に反映されます。
よくあるローカリゼーションQCエラー:
技術的なエラー(濃い青)と言語エラー(明るい青)における分類は以下の通りです: