この記事では、Davinci Resolveを使用してACES規格の色管理されたパイプラインを構築するための参考情報を提供します。ここで紹介するのは、Netflixにグレーディングされていないアーカイブマスター (NAM) を納品する際に役立つDavinci Resolveのさまざまな設定の一例です。
この記事の手順は要件ではなく推奨される実施方法を示したものです。下記に記載される方法はACESワークフローを対象としますが、Resolveのカラーマネージメントワークフローの全機能を網羅しているわけではありません。
本ガイドラインは現在、Davinci Resolveのバージョン16.2に対応しています。
Blackmagic社のご協力により以下のチュートリアルが作成されています。カラーマネジメントの参考にしてください。
- DaVinci ResolveにおけるACESの設定方法
- DaVinci ResolveにおけるACESからの納品
- Davinci Resolveを使用したデイリーから最終グレーディングへのカラーラウンドトリップ: パート1
- Davinci Resolveを使用したデイリーから最終グレーディングへのカラーラウンドトリップ: パート2
ACESワークフロー
ACESについてさらに詳しく知りたい方はACES Centralのこちらのスレッド(英語) からアカデミーカラーエンコーディングシステムの詳細をご覧ください。
Davinci ResolveでのACESの実装について詳しくは、Davinci Resolve リファレンスマニュアルの 「データレベル、カラーマネージメント、ACES (The Data Levels, Color Management, and ACES)」章の「ACESを使用したカラーマネージメント (Color Management using ACES)」セクションをご覧ください。
プロジェクト設定
新規プロジェクトを作成したら、プロジェクト設定 (Project Settings) > カラーマネージメント (Color Management)パネルを表示します。まず、カラーサイエンス (Color Science)の設定をACEScctに変更してください。ACESccを使う特別な理由がない限り、ACEScctのご使用をお勧めします。
ACESバージョン (ACES Version)はデフォルトでv1.1が設定されます。v1.1にはHDR出力の色空間に対応する最新のOutput Transformが含まれます。現時点では通常は最新のACESバージョンであるv1.1を使用することをお勧めします。
ご利用のビデオディスプレイのキャリブレーションと性能に合わせて、ACES出力デバイストランスフォーム (ACES Output Device Transform)を以下のように設定してください。
- SDRの場合、Rec. 709を設定します。この設定は、Rec. 709 / BT.1886に準拠してキャリブレーションされた、ピーク輝度100 cd/m2のモニタに対応します。
- HDRの場合、P3-D65 ST.2084 (PQ)とご利用のモニタのスペックに応じたニットレベルを設定します。現時点でもっともよく使われる設定はP3-D65 ST2084 (1000 nits)です。
- グレーディングと仕上げプロセス全体を通して、ACESミッドグレー輝度 (ACES Mid Gray Luminance) の設定は常に15.00にしてください。
ノードLUT処理 (Process Node LUT) は、LMTをプロジェクトにLUTとして読み込む場合にのみ適用されます。この設定は作成されたLMTによって異なります。LMT関連の情報について詳しくは、このスレッドをチェックしてください。
重要事項: ACES出力デバイストランスフォーム (ACES Output Device Transform) をなしに設定すると、ResolveはACES 2065-1とも呼ばれるACESリニア (AP0) のACEイメージで出力します。
クリップの読み込み
デフォルトで、RAWクリップの場合、Resolveが自動的にディベイヤー処理を行いACES規格にするため、見た目は通常の画像が表示されます。
RAW以外の形式 (DPX、ProRes、XAVCなど) では、Resolveが自動的に色空間を検出できないことがあり、その際は手動でACES入力デバイストランスフォーム (IDT) を選択する必要があります。
選択を行うにはメディアプール (Media Pool) で単一もしくは複数のショットを右クリックします。以下のスクリーンショットを参照してください。
例: ソニー製のF55カメラでSLog3-SGamut3.CINEの色空間を使用してXAVC形式で収録し、このクリップをメディアプールに読み込んだとします。Resolveはメタデータをもとにこの情報を認識することができないため、ACES入力デバイストランスフォーム (ACES Input Device Transform) のドロップダウンリストから[Sony SLog3 SGamut3CINE]を手動で選択する必要があります。
また、特定のACES入力デバイストランスフォームをプロジェクトのデフォルト設定にすることもできます。ほとんどのクリップの色空間が共通で、自動検出されない場合に便利な機能です。
ヒント: メディアプールのコラムを[フォーマット (Format)]や[ビデオコーデック (Video Codec)]でソートして、ハイライト表示された複数のクリップにIDTを一度に割り当てることができます。以下のスクリーンショットを参照してください。
レンダリング
納品物をレンダリングする準備ができたら、デリバー (Deliver)ページを開きます。
IMFマスター、ビデオディスプレイマスター (VDM)、またはQuicktime参照ファイル
IMFマスターの納品物、IMF作成用のVDMソース、Quicktime参照ファイルに必要なディスプレイの色空間で画像をレンダリングする際は、必ずACES Output Transformを有効にして目的の表示方式を設定してください。
グレーディングされていないアーカイブマスター (NAM)
グレーディングされていないアーカイブマスター (NAM)の場合、ACES AP0/リニアデータを出力するには、以下のようにACES Output Transformを必ず無効にしてください。
注意: ACESパイプラインに制作会社間やソフトウェア間での画像 (VFXプレートなど) の受け渡しがある場合は、次の方法で行ってください。
NAMをレンダリングする際にグレーディングを無効にするには、デリバー (Deliver)ページでフラットパス (Enable Flat Pass) オプションを使用できます。以下のDavinci Resolveマニュアルのスクリーンショットをご覧ください。
次のレンダリング設定になっていることを確認してください。
レンダー (Render) | 単一のクリップ (Single Clip) |
ファイルの種類 (File Type) | EXR |
コーデック (Codec) | RGB half (非圧縮) / 可逆圧縮 (ZIPまたはPIZ) (RGB half (No Compression) / Lossless Compressions ZIP or PIZ) |
レンダリング出力の解像度 (Resolution) | 当該シーンの作業フォーマットと同じ |
プロジェクト設定のACES出力デバイストランスフォーム (ACES Output Device Transform (in Project Settings)) | 出力トランスフォームなし (No Output Transform) |
フラットパス (Enable Flat Pass) | 常に有効 (Always On) |
注意: 最高品質でディベイヤー (Force debayer to highest quality) の設定では、タイムライン上の各RAWファイルに可能な限り高い品質のディベイヤー処理を行うための推奨設定が自動的に選択されます。ご自身で行う場合と処理結果が異なることがあります。また、ご希望のディベイヤー処理アルゴリズムを自由に選択して、このオプションのチェックをはずすこともできます。
注意: 解像度はプロジェクトのフレーミングにより変わりますが、UHD解像度 (3840 x 2160) 以上にしてください。
1 ACESの色空間はリニアであるため、ACEScctとACESccの空間は対数 (ログ) の作業用色空間と定義されます。したがって、従来のカラーコレクションツールで他のログ色空間と同じような感覚で操作できます。
2 現在のところ、Netflixの納品ではRec.2020を使用していません。
3 half = 16ビット半精度浮動小数点数
4 出力トランスフォームなし (No Output Transform) を選択すると、ACESリニア(=ACES 2065-1 (AP0)) で出力されます。
変更ログ
2021年12月3日
Blackmagic社のチュートリアルへのリンクを追加。