Welcome to the Netflix Partner Help Center. Have a question or need help with an issue? Send us a ticket and we'll help you to a resolution.

はじめに

独創的な新しいメディア (動画、音声、テキスト、画像) をユーザーが瞬時に生成できる生成AIツールは、コンテンツ制作のクリエイティブワークフロー全体でますます普及しつつあります。Netflixは、こうしたツールが透明性と説明責任を確保して使用される場合には、制作に役立つ有益な手段になると考えています。

本書では、映画製作者、制作パートナー、ベンダーを対象に、コンテンツ制作における生成AIツールの使用場面や使用方法について解説します。また、Netflixのコンテンツを制作する際の生成AIの利用について評価し、自信を持って使用できるようにするための実用的なツールも用意しています。

Netflixが世界中の制作チームをサポートして常にベストプラクティスを実践できるよう、制作パートナーの皆様には、生成AIの使用目的についてNetflix担当者に報告していただきたいと考えています。さまざまな機能とリスクを伴って新しいツールが次々と登場している現在、そうした対応は特に重要です。

以下の基本方針に沿っている最もリスクの低いユースケースであれば、法務チームによる確認は不要な場合がほとんどです。ただし、生成AIの出力が最終納品物に含まれる場合や、俳優の肖像、個人データ、第三者のIPなどが出力に含まれている場合は、先へ進む前に書面での承認を得る必要があります。


基本方針

生成AIツールの利用を取り巻く不安定な状況と法的環境の整備を踏まえて、生成AIをワークフローに導入する場合は責任を持って対応することが不可欠です。クリエイティブワークフローで生成AIを活用する場合、あらかじめ以下の基本方針を考慮するようお願いします。

  1. 生成AIの出力が、所有権のない素材や著作権で保護されている素材の明らかな特徴を再現もしくは実質的に再構築していないこと。または、著作権で保護されている作品を侵害していないこと。
  2. 使用する生成AIツールで、制作関連の入力または出力データを保存、再利用したり、トレーニングに使用したりしないこと。
  3. 可能な場合は、入力データを保護するために企業向けの安全な環境で生成AIツールを使用すること。
  4. 生成された素材は一時的なものであり、最終納品物には含まれないこと。
  5. タレントの演技や組合が担う作業を、関係者の承諾を得ずに、生成AIツールで置き換えたり、これらを新たに生成したりしないこと。

上記すべてに対して自信を持って「はい」と回答できる場合は、Netflix担当者に使用目的を報告すれば十分です。「いいえ」または「わからない」という回答がひとつでもある場合は、書面での承認が必要になることがあるため、先へ進む前にNetflix担当者にエスカレーションし、具体的な対応について確認してください。 

パートナーベンダーがカスタムの生成AIワークフロー (複数のツールやモデルで構成されたパイプライン) を使用している場合も、同じ方針が適用されます。詳細については、こちらを参照してください。


書面での承認が常に必要となるのはどのようなユースケースですか?

以下の条件があてはまる場合には、使用目的の報告に加え、先へ進む前に必ずエスカレーションと書面での承認が必要になります。

1. データの使用

生成AIツールを使用して作業する際は、個人データや制作関連の権利を保護しなければなりません。こうしたツールでは多くの場合、出力を生成するために入力データが必要であり、そのデータがどのように処理されるかが重要です。生成AIツール、特に一般に流通している第三者のツールを利用する場合は、特別な対応、権利処理、承諾が必要な素材を使用しているかどうかを検討してください。

  • 機密情報や個人情報の使用 – 明示的に許可された場合を除き、Netflixに所有権のある素材 (未公開のアセット、スクリプト、撮影画像など) や個人データ (キャストやスタッフの詳細情報など) を生成AIツールに入力しないでください。
  • 第三者の、または所有権のないタレントのアセット – 適切な法的許可を受けている場合を除き、アーティスト、俳優、またはその他の権利所有者の素材を使用してモデルのトレーニングやファインチューニングを行わないでください。

例: Netflixまたは本人による権利処理が完了していない別のアーティストの過去の作品ライブラリを使用して、そのスタイルで画像生成モデルをトレーニングする。

 

2. クリエイティブコンテンツの出力

AIにより生成されたコンテンツは、それが作品内で目立つ部分やストーリー上重要な部分にあたる場合は特に、注意して使用しなければなりません。特定のシーンの世界観、キャラクター、アートワークなど、描写しようとしている内容を問わず、従来制作されてきたアセットと同じ制作基準や法的基準が適用されます。

  • 主要なクリエイティブ要素の生成 – メインキャラクター、キービジュアル、ストーリーの核となる架空の設定などを、書面での承認を得ずに生成AIを使用して生成しないでください。

例: 「イカゲーム」でヨンヒと赤信号/青信号ゲームをする2体目の殺人人形を、生成AIを使用して生成するなど。

  • 著作物や個人の肖像 – 著作権で保護されている素材や、著名人または故人の肖像を参照する入力データ (プロンプト、画像など) を、適切な権限なしに使用することは避けてください。

例: "スティーブ・マッカリーの「アフガンの少女」をモチーフにした画像を作成して”と入力する、または著名な俳優の目立つ特徴を再現するよう指示する (“メリル・ストリープのような鼻のキャラクターを作成して”など)。

 

3. タレントと演技

俳優とその出演作品を尊重することは、生成AIの責任ある利用における基本原則です。記録された演技に生成AIで加工を施す、あるいはデジタル技術でキャラクターを生成する場合、特定の演技の演出意図やキャラクターが改変される可能性があるときは特に十分な配慮と承諾が必要となります。

  • 合成またはデジタルレプリカ - 書面による明示的な承諾を得ずに、また組合の要求に従わずに (該当する場合)、デジタル技術を使って俳優や音声、実在のタレントの肖像を作成しないでください。
  • デジタル技術による大幅な演技の改変 - 俳優の感情表現、演技、意図などに作用する変更を加える場合は、たとえごくわずかな変更でも、法的にあるいは評価に影響を及ぼす可能性があるため、十分注意してください。

例: 視覚的なADR (リップシンクや顔の表情を、台本にない新しいセリフに合わせて編集するなど)。

 

4. 倫理と描写

視聴者にとって、画面上の映像や音声は信頼できることが大前提です。生成AIは、配慮なく使用した場合、現実とフィクションの区別を曖昧にしたり、意図せずに視聴者を誤解させたりする可能性があります。Netflixが、AIで生成されたコンテンツの意図と影響力の両方を考慮するよう制作チームに求めるのは、そのためです。

  • 誤解を招く、または誤った内容のコンテンツ – 現実には発生していない、または存在していないのに、実際の出来事や発言、実在の人物だと誤解させる可能性があるコンテンツ (本物として提示される架空の映像、セリフ、シーンなど) は作成しないでください。

例: 生成AIを使用して、実在のジャーナリストがでっち上げの発言をしたと報じるフェイクニュースを作成する (背景情報として意図されている場合も含む)。

  • 組合の役割に対する影響 – 適切な承認や合意を得ることなく生成AIを利用することで、組合に所属する個人 (俳優、脚本家、スタッフなど) が通常担う仕事が取って代わられたり、実質的な影響を受けたりすることがないようにしてください。

確実に機密性を守りデータを保護するには

Netflixの企業間契約で指定されたツールを利用することで、入力データを保護するためのセキュリティを強化できます。利用可能なツールとオンボーディングプロセスについては、Netflix担当者にお問い合せください。こうした企業向けツールを利用すると、次のようなメリットがあります。

  • 入力データの取得、トレーニング利用、再販売を回避できる
  • 機密性の高い入力データ (スクリプト、撮影画像、タレントの映像など) を保護できる

安全なツールであっても、機密性の高い情報 (タレントの肖像、未公開の映像、契約書など) を使用する場合には、Netflix担当者へのエスカレーションが必要となります。

企業向けツール以外のAIツール、プラグイン、ワークフローを使用する場合は、入力または出力するデータがツールのトレーニングに利用されないよう、ご注意ください。ライセンス利用が不適切であったり、またはデータに関する取り扱い条件が事前交渉がなされていない場合、機密性が損なわれる恐れがあります。使用者は、契約条件を確認する責任があります。ご不明な点がある場合は、Netflix担当者にお問い合せください。

最終出力と一時メディアにおける注意点の違い

生成AIを利用して作成したコンテンツが最終カットに (背景であっても) 登場する場合、法律上、著作権上、または視聴者との信用上の問題が生じる可能性があります。そのため、生成AIで生成された要素があり、特にそれが画面上の映像や音声として認識できる場合は、必ず早期報告してください。

AIで生成された映像、音声、テキスト素材 (ポスター、文書、看板、ニュース記事など) が含まれている場合は、早期にNetflix担当者へ法務確認の依頼をしてください。AIで生成された素材が最終制作物に含まれる場合、事前の権利処理が必要になる場合があります。

生成AIで生成された小道具やセットの中には、偶発的と見なされるものもあります。たとえば、背景に歴史的文書が一瞬映るものの、シーン内では言及されない場合などです。ただし、その要素が目立つ場合は (キャラクターが声に出して読んだり、ストーリーに関係したりするなど)、十分に注意して対処する必要があります。

このような場合、生成AIはアイデアやモックアップを発展させるために使用できます。ただし、最終バージョンには人間による入力が有意義な形で反映されていること、またNetflix担当者による法務確認が必要です。


生成AIを用いた出演者加工における留意点

デジタル技術による演技の編集は、ポストプロダクションやVFXでは長年の慣習となっています。しかしながら、AIを利用して俳優の外見や声を改変、複製することは、法的にも、倫理的にも、信用面でも新たな課題をもたらしています。そのため、必要な場合は承諾を得て、慎重に対処することが重要です。タレントを加工する事例の多くは法務確認を要するため、適宜計画を立てるようにしてください。考慮すべきポイントを以下に紹介します。

  • デジタルレプリカ (デジタル技術で生成され、特定の俳優の音声や外見として認識できるものであり、その俳優があたかも実際に出演したかのような画像や音声として描写した出力) を作成する場合は、承諾が必要です。その出力が次のいずれかに該当する場合、デジタルレプリカの使用に関して承諾を得る必要はありません。(1) 元のスクリプト、演技、録音/録画がおおむね維持されている (再撮影など)。(2) 安全上の理由により人間には実演できない行為を描写している。(3) 結果として登場人物が誰であるか認識できない (マスクを着けているなど)。
  • デジタル改変: デジタル改変を行う場合、通常は承諾が必要です。ただし、エンターテインメント業界や映画業界で習慣的に行われている次のようなケースは例外です。
    • 改変後の写真やサウンドトラックで、元のスクリプト、演技、録音/録画がおおむね維持されている。
    • ポストプロダクションにおける、外見、衣装、ノイズ除去、タイミング、コンティニュイティー、音程、鮮明度などの調整を目的とした変更。
    • 既存の契約で、吹替または代役の使用が許可されている。
  • AIモデルの使用:
    • タレントに加工を施すためにトレーニングされたモデルは、当該制作チームのみが、タレントと合意した作業範囲内で使用しなければなりません。
    • 全関係者の明白な承諾を得ずに、俳優の演技を別の撮影、状況、コンセプトで作り出すためにモデルを使用することはできません。
  • 品質保証:
    • 出力されたコンテンツの品質が創造性と技術面の両方で基準を満たしていることを確認し、タレント本来の演技に悪影響を及ぼさないようにするため、早い段階でテストを行います。
    • 適切かつ現実的な場合は、最善の結果を確保できるよう、タレントのデータを収録する専用セッションを計画します。
    • 俳優の評判や尊厳、個人的なイメージを損なう恐れのある加工を施すことは避けます。

上記のガイドラインに従うことで、俳優の権利や尊厳を尊重しながら、クリエイティブワークフローで生成AIを適切に利用することができます。


制作チーム、またはその提携ベンダーがカスタムワークフローを使用する場合はどうなりますか?

ベンダーの対応: 複数のツールから成るカスタムの生成AIワークフローを使用してNetflixに納品する場合、そのパイプラインの各ステップが、本書に記載されているデータ保護、承諾、コンテンツの誠実さに関するNetflixの基準を満たす必要があります。

制作パートナーの対応: 採用するベンダーやAIスタジオにおけるデータやクリエイティブコントロール、最終出力の管理方法を評価する際の枠組みとして、本書を使用します。そのパイプラインが本書に記載された方針に沿っているかどうか判断できない場合は、Netflix担当者にご相談ください。


付録

ユースケース案一覧

こちらの「ユースケース案一覧」を参照して、優先的に対応すべきユースケース案を迅速に判断できます。

ユースケース案

対応 理由
アイデア出しの目的でのみ生成AIを使用 (ムードボード、参考画像) リスクが低く、最終納品物には使用しない。基本方針に従っていればエスカレーションは不要です。
カメラに映る背景要素 (例: 看板、ポスター) を生成するために生成AIを使用 ⚠️ 判断が必要: 偶発的な要素であれば恐らくリスクは低いものの、ストーリーに関係する場合はエスカレーションしてください。
最終的なキャラクターデザインやキービジュアルを作成するために生成AIを使用 🛑 法的権利、視聴者の認識、組合の役割などに影響を及ぼす可能性があるため、エスカレーションが必要です。
タレントを再現する目的で生成AIを使用 (若返り、合成音声など) 🛑 承諾と法務確認のためにエスカレーションが必要です。
所有権のないデータ (著名人の顔、著作権で保護されたアートなど) をトレーニング用に使用 🛑 著作権などの権利を侵害する恐れがあるため、エスカレーションが必要です。
Netflix独自の素材を使用 ⚠️ 安全な企業向けツール以外を使用する場合は、確認のためエスカレーションが必要です。
この記事は役に立ちましたか?
105人中98人がこの記事が役に立ったと言っています