この記事では、吹替スタジオが制作する吹替音声で強制字幕が必要となるすべてのケースを特定できるようにするためのガイドライン、および強制字幕の要件について説明します。
この記事に記載されている指示の対象となるのは、Netflixの吹替チームが委託する長尺コンテンツの吹替音声用の強制字幕のみです。
その他の場合に使用する強制字幕は、本ガイドラインの対象ではありません。
目次
強制字幕 (FN)
強制字幕とは、吹替音声ではカバーしきれないストーリーの要点をテキストオーバーレイ (字幕) により説明するものです。ターゲット言語の吹替で視聴する際にストーリーを理解するために必要です。
字幕設定がオフの時でも画面上に表示されるため、"強制"字幕と呼ばれています。単独ではなく、吹替音声を補うために使われます。視聴者が自分の設定した言語でストーリーを理解できるよう、必要な情報を吹替音声と共に伝える役割を果たします。
一般に、強制字幕を使用するのは次のような場合です。
- 画面上のテキスト: ポストプロダクションで (ロケーションカードやその他グラフィックとして)、または撮影過程で (ストーリーの環境に登場するテキストとして) 追加するもの。
- コンテンツの主言語 とは異なる 言語での会話。
- 楽曲: 歌詞がストーリー上重要な情報を提供する場合。
- アーカイブ映像。
強制字幕のガイドライン
吹替作業の中で、何を吹替で表現し何を強制字幕として伝えるかを決める際は、慎重に検討する必要があります。その決定がクリエイティブエクセレンスの実現を左右するためです。吹替スタジオは、制作した吹替音声に含まれていないが視聴者に伝える必要があるコンテンツ内の要素を見極めなければなりません。
Netflixは、強制字幕ファイル用のイベントの選択に関して以下のガイドラインを設けています。
- 吹替スタジオは、作品のコンテンツや対象視聴者の文化的好み、吹替版におけるクリエイティブエクセレンスに関するNetflixのガイドラインに基づいて、強制字幕が必要なイベントを特定すること。
- 強制字幕の対象として選択する各イベントは、吹替音声には含まれていないがストーリーを理解するうえで必要な、あらすじ (または登場人物) についての情報を提供するものであり、プロットに不可欠であること。
- 強制字幕ファイル用に選択するイベントは、吹替音声と矛盾がないこと。また、過剰な、繰り返しになる、もしくは不要な情報を追加したり、必要な情報を欠いていたりしないこと。
重要:
- 強制字幕のガイドラインに加えて、言語別のクリエイティブエクセレンスに関する指針にも従うようにしてください。
- Netflixが (番組ガイドやCLP一斉配信メッセージなどで) 提供するプロジェクト固有の強制字幕に関する指示が、本書のガイドラインおよび言語別の強制字幕のガイドラインに優先します。
強制字幕の要件
コンテンツの要素の中には特に注意が必要なものがあります。Netflixの吹替担当者から別段の指示がない限り、吹替スタジオは常に以下の指示に従ってください。
メインタイトル
- 画面上のメインタイトルについて、Terminologyに登録されているターゲット言語の承認済みタイトルがあり、それが画面に表示されるタイトルと一致しない場合は、強制字幕を使用します。
- メインタイトルは独自に翻訳せず、必ず承認済みのものを使用してください。
- Terminologyに登録されているターゲット言語の承認済みタイトルがコンテンツのメインタイトルと同じであるときは、強制字幕を使用しないでください。
エピソードタイトル
- エピソードタイトルを画面上に表示し、吹替音声でボイスオーバーにしない場合は、強制字幕を使用します。
- エピソードタイトルは、ターゲット言語で承認済みのものをTerminologyでチェックし、任意で翻訳しないでください。
- ターゲット言語でエピソードタイトルを強制字幕にすると重複的になる場合は、強制字幕を使用しません。
- 韓国語のみ: エピソードタイトルを画面上に表示するかどうか、ボイスオーバーにするかどうかにかかわらず、強制字幕は使用しないでください。
Netflixクレジット
- 担当者から別段の指示がある場合を除き、Netflixオリジナル作品のクレジットには強制字幕を使用しないでください。
- Netflixクレジットに強制字幕を使用するよう求められた場合は、Netflix Original Creditsドキュメントでターゲット言語の承認済み翻訳を参照してください。
スタイル
- 各イベントの強制字幕の行数は最大2行です。
- 2行では収まらない場合は、イベントを分割してください。
- 1行の最大文字数は、ほとんどの言語で42文字です。
- 例外:
- 韓国語: 1行の最大文字数は16文字です。
- タイ語: 1行の最大文字数は35文字です。
- 繁体字・簡体字中国語: 1行の最大文字数は16文字です。
- 日本語:
- 横書きの場合、1行の最大文字数は全角13文字です。
- 縦書きの場合、1行の最大文字数は全角11文字です。
- 例外:
強制字幕を使用するケース
画面上のテキスト
- 画面上のテキストを強制字幕にする場合、字幕言語のアルファベットに大文字/小文字があれば、強制字幕はすべて大文字表記にします。
- 画面上のテキストの強制字幕は、最小許容時間と最大許容時間に注意しつつ、表示時間が画面上のテキストと同じになるようにします。
- 最小許容時間: 20フレーム
- 最大許容時間: 7秒
- 画面上のテキストがフェードインまたはフェードアウトする場合は、いくつかのタイミングを試してみて、強制字幕と画面上のテキストが同期するようにします。
外国語のセリフ
外国語のセリフとは、作品の主言語以外の言語での会話のことです。
- 外国語のセリフに強制字幕を使用する必要があるのは、その会話を視聴者が理解するという前提があり、ターゲット言語の吹替がない (ストーリーに関係する情報を提供する会話である) 場合です。
楽曲
作品に登場する楽曲はすべて、ストーリーを伝えるうえで一定の役割を果たすよう慎重に選ばれたものであり、コンテンツ制作者の創造的なビジョンを反映しています。
吹替音声でオリジナルバージョンのまま残されている楽曲については、以下の点に注意してください。
- 楽曲の内容がプロットの展開上不可欠で、ストーリーや登場人物に関係があり、他の方法では視聴者にその情報を提供できない場合には、強制字幕の使用を検討します。
- オープニングとエンディングのテーマソングを含め、サウンドトラックには強制字幕を使用しないでください (Netflixによる別段の指示がある場合を除く)。
- 歌詞の強制字幕はイタリック体にします。
- 歌詞の強制字幕の行末には疑問符と感嘆符のみを使用します (カンマやピリオドは使用しません)。
- 楽曲を強制字幕の対象として見なしてよいのは、使用権が付与されている場合のみです。
- 使用権は、楽曲がオリジナル (作品用に委託された曲) か、ライセンス曲か、パブリックドメインかによって異なります。楽曲の使用権に関しては、必ずNetflix吹替担当者に確認を取ってください。
アーカイブ映像
- ストーリー上不可欠で、吹替になっていないアーカイブ映像には、強制字幕を使用できます。
- アーカイブ映像と見なされるコンテンツや、その取り扱い方法については、言語別のクリエイティブエクセレンスに関する指針を参照してください。