Netflix サウンドミックスの仕様と実践ガイド v1.1
1.0 MA用ニアフィールドオーディオ要件
1.1 ニアフィールド 5.1サラウンドミックス - オリジナル版、吹き替えミックス、解説音声
1.2 ニアフィールド 2.0ステレオミックス - オリジナル版、吹き替えミックス、解説音声
1.3 ニアフィールド 5.1サラウンドM&Eミックス
1.4 ニアフィールド 2.0ステレオM&Eミックス
1.5 ニアフィールドアトモスミックス
1.5.1 配信用
1.5.2 ローカリゼーション用
1.5.3 アーカイブ用
2.0 劇場版ミックス - マスタリング&アーカイブ
3.0 実践ガイド
3.1 ダイアログベースのラウドネス及びラウドネス範囲
3.2 ピーク
3.3 部屋の設定
ラウドネス平均値はダイアログベースで-27 LKFS +/- 2 LUであること。ピークは-2dbトゥルーピークを超えないこと。オーディオはITU-R BS.1770-1ガイドラインに従ってプログラム全体を計測すること。
以下の2点の例外を除き、標準、もしくはRF64 ディスクリート LPCM .wav 又は .bwav ファイルが必要:
- ソースがIMF、Quicktime、Atmos BWAV ADM納品などのソースに内包されるマルチチャンネル(インターリーブ)ファイルである場合
- Backlotに納品されたローカライズミックス(吹き替えミックス)の.wavが.movにラッピングされている場合
コンテンツハブへの納品はフォルダ、もしくはセッションデータを含むPro Toolsセッションフォルダ内に収められたディスクリートの音声ファイルのみであること。Pro Toolsセッション以外を納品する場合は、AAF/OMFを必ず含むか、すべてのチャンネルが連続したPCMオーディオとしてレンダリングされていること。
可逆/非可逆圧縮されたオーディオは受け付け不可。オーディオは必ずリニアPCMであること。
サンプルレート及びビット深度:
オリジナル言語ミックス又はM&Eミックスの場合は48k/24bitであること。ステム及びミックスマスターに適用される。
第二言語や解説音声は48k/16bit 若しくは 24bitであること。
オーディオはプロジェクトのネイティブフレームレートの映像に同期して収録されていること。すべてのオーディオ納品物は撮影、映像ポストプロダクションにおけるフレームレートに一致すること。全てのオーディオは最終のIMF/ProRes納品に同期しなければならない。
5.1コンフォームオーディオが作成されていない場合、ステレオオーディオを許容する(作品のオリジナルソースがモノラルで、ステレオや5.1ミックスが存在しない場合はモノラルオーディオを許容する。モノラルオーディオはチャンネル1&2に複製し、2チャンネルで納品すること)。
1.1 ニアフィールド 5.1サラウンドミックス - オリジナル版、吹き替えミックス、解説音声
- 79db spl 又は 82db splをミキシングの標準リファレンスレベルとすること
- ITU-R BS.1770-1を使用してプログラム全体で計測し、ダイアログベースで -27 LKFS (+/- 2 LKFS)になること
- -20 dbfsリファレンス上でミックスレベルを下げずにピークを制限し、+18db (-2 dbfs) 最大レベル(トゥルーピーク)を維持すること
- 5.1ダイアログ、ミュージック、エフェクトステムは、合わせたときに5.1ミックスと等しくなるようにすること
1.2 ニアフィールド 2.0ステレオミックス - オリジナル版、吹き替えミックス、解説音声
- 79db spl 又は 82db splをミキシングの標準リファレンスレベルとすること
- 別個のLo/Ro 又は LT/RTミックスは、ITU-R BS.1770-1を使用してプログラム全体で計測し、ダイアログベースで-27 LKFS (+/- 2 LKFS)になるよう提供すること
- Lo/Roミックスを推奨
- Lo/Ro 又は LT/RTミックスはモノラル対応であること
- -20 dbfsリファレンス上でミックスレベルを下げずにピークを制限し、+18db (-2 dbfs) 最大レベル(トゥルーピーク)を維持すること
- 5.1からダウンミックスしてLo/Ro 又は LT/RT 2.0ミックスを作成する場合:
- センターチャンネルの低音域は-3dbほど下げる
- センターチャンネルのコンテンツは左及び右チャンネルの双方に入れる
- サラウンドチャンネルの低音域は少なくとも-3dbほど下げる
- 左と右のサラウンドチャンネルを対応する左と右のチャンネルにフォールドダウンする
- オプションで、低域効果音(LFE)のチャンネルを-8dbから-12dBの間で含む
-
- 低域効果音(LFE)のチャンネルを左及び右チャンネルの双方にフォールドダウンする
- LFEへのローパスフィルターは200Hz以下にする
- フォールドダウンの前に個別の5.1チャンネルであらゆる調整を行うこと
注: 最終的な2.0ミックスは、音声不具合がないことを納品前に確認すること。不具合を防止するため、Netflixが必要とする場合はさらなる調整を加えること。
- 48kHz/24-bit
- 音楽と効果音のみが含まれた(ダイアログを除く)完全な5.1サラウンドミックスを別に提供すること
- オリジナルミックスと一致するよう、ルームトーンやフォーリーで足りない部分は埋めること。メインのミックスに含まれるダイアログ以外のあらゆる音はM&Eミックスにも含まれていること
- 後日新たに吹替言語を作成する際のミックスを容易にするため、全てのレベルは最終マスタリングやアーカイブで使われたものを反映すること。ピークは−2dbトゥルーピークを超えてはならない。
- M&Eオプションステムは別の5.1WAVファイルを用意すること。
- M&Eを作成するミキサーは、Netflixがヘルプセンター上に提供するM&E作成ガイドラインを参照すること: M&E作成ガイドライン.
- 48kHz/24-bit以上
- 音楽と効果音のみが含まれた(ダイアログを除く)完全な2.0ステレオミックスを別に提供すること
- オリジナルミックスと一致するよう、ルームトーンやフォーリーで足りない部分は埋めること。メインのミックスに含まれるダイアログ以外のあらゆる音はM&Eミックスにも含まれていること
- センターチャンネルのコンテンツはLoRo又はLT/RTのデフォルト設定として3db低減すること
- 後日新たに吹替言語を作成する際のミックスを容易にするため、全てのレベルは最終マスタリングやアーカイブで使われたものを反映すること。ピークは−2dbトゥルーピークを超えてはならない。
- M&Eを作成するミキサーは、Netflixがヘルプセンター上に提供するM&E作成ガイドラインを参照すること: M&E作成ガイドライン.
ドルビーアトモス ホームミックスは以下の要件に適うこと。
- 最低でも7.1.4対応の部屋でミックスすること
- ホームアトモスミックスの部屋はドルビー認定である必要はありません。
- ニアフィールドミックスであること。ニアフィールドミックスの一般的なモニタリングレベルは79db または 82dbである
- ラウドネスをNetflix仕様に合わせること(ダイアログベース-27db LKFS +/- 2 LU 1770-1)
- ピークが-2dbfsトゥルーピークを越えないこと。そのためには、すべてのベッドとオブジェクトのトゥルーピークリミッターを-2.3以下に設定することを推奨する。ラウドネス及びピークは派生物の5.1経由で計測すること
- ネイティブアトモスミックスの場合は、ドルビーアトモスレンダラーから出力された5.1と2.0の”非”アトモスミックスがNetflixのラウドネスとピークの仕様を満たしていること
- 全てのベッドとオブジェクトがエンコードされていて常に可聴であること。プリントマスターは全てのベッド素材のコンポジット、または複数のベッドを使用して構わないが、両方は利用できない
- シリーズ、ドキュメンタリー、バラエティ、コメディ全ての作品において、ベッドとオブジェクトはダイアログ・音楽・効果音ごとに分けてあること。映画の場合は、DMEを可能な限り分けること。
- 85db がリファレンスとなる劇場用ミックスを作成した場合は、劇場用とニアフィールドの両方が納品物として必要となる
- アトモスファイルは最終のIMFの映像の長さと完全に一致させ、リールごとではなく単一のファイルとして用意すること。リーダー及び同期用の音は削除すること。
- FFOAはデフォルトのまま使用すること(「Add FFOA」チェックボックスにチェックをつけないこと)。バージョン3.0以前のレンダラーソフトウェアを使用している場合は、FFOAの値を赤色の「ー」のままにすること。
- 最終版のホームシアタープリントマスター
- 単一、若しくは複数のLCR, 5.0, 5.1, 7.1 又は 7.1.2ベッド
- トラック11-128はオブジェクトやベッド用に使用可能
- 48 kHz, 24 bit
- Dolby Atmos BWAV ADM ファイル
- ナレーションなしのミックス(該当する場合)
- 単一、もしくは複数のLCR, 5.0, 5.1, 7.1 又は 7.1.2ベッド
- トラック 11-128はオブジェクトやベッド用に使用可能
- 48 kHz, 24 bit
- Dolby Atmos BWAV ADMファイル
- M&Eミックス(音楽&効果音)
- Dolby Atmos BWAV ADMファイルもしくはPro Tools Recorderセッション
- 単一、もしくは複数のLCR, 5.0, 5.1, 7.1 又は 7.1.2ベッド
- トラック11-128はオブジェクトやベッド用に使用可能
- M&E オプションステムは別のWavファイルとして用意
- チャンネルマッピングはM&Eミックスのベッドと一致すること
- 48 kHz, 24 bit
- 全ての納品物は単一のファイルとして最終的な映像にコンフォームし、同期がとれていること
- 最終的なホームシアター版プリントマスターDAMF (Dolby Atmos Master File)
- DAMFファイルの構成:
- .atmos ファイル
- .audioファイル
- .metadataファイル
- トラックはグループ分けされ、会話、音楽、効果音ステムに対して関連付けされていること
- 単一、もしくは複数のLCR, 5.0, 5.1, 7.1 又は 7.1.2ベッド
- DAMFファイルの構成:
- M&E DAMF (Dolby Atmos Master File) (該当する場合)
- DAMFファイルの構成:
- .atmosファイル
- .audioファイル
- .metadataファイル
- トラックはグループ分けされ、会話、音楽、効果音ステムに対して関連付けされていること
- 単一、もしくは複数のLCR, 5.0, 5.1, 7.1 又は 7.1.2ベッド
- DAMFファイルの構成:
- Pro Tools アトモスフルミックスセッション(必要な場合)
- DCPに使用された劇場版ドルビーアトモスMXF
- 劇場版ミックスは以下の2点以外は上記に示したニアフィールドの仕様に従うこと:
- ミックスの標準リファレンスレベルとして 85db spl を使用すること
- 劇場版ミックスにはLKFSラウドネス要件はないため、0dbトゥルーピークをピークとしてもかまわない
- 劇場スペックでの会話、音楽、効果音ステムを提供すること
注: 以下は技術的な仕様ではありません。最適なユーザー体験を作り出すためのガイドです。以下のガイドラインは推奨事項であり、必ずしも従う必要はありません。
Netflixはクリエイティブの意図を守ることに最大限の努力を投じており、オーディオミックスに対して圧縮、制限、修正は行いません。但し、あまりダイナミックレンジが広すぎないコンテンツのほうがユーザー体験はより良いものになります。
全てのオーディオ納品物は標準化され、サービス上で全てのオーディオが同じレベルで再生されるようにします。作品間で一貫した再生を行えるよう、全体のミックスレベルを調整します。
以下の計測製品はテスト済みで、Netflixのオーディオ仕様に効果的に一致させることができることを確認済みです:
次のラウドネス範囲(LRA)の値がサービス上で最もよく聞こえます:
- 5.1 プログラムの LRAは4から18 LUであること
- 2.0 プログラムのLRAは4から18 LUであること
- 会話のLRAは10 LU以下であること
ニアフィールド5.1ミックスのダイアログが15%以下と計測した場合は、代わりにプログラムベースの計測を使用してください(-24db LKFS +/- 2 LU - ITU BS 1770-3)
LoRoフォールドダウンやダウンミックスの際は、ITU-R BS.775-1 - 5.1 to Stereo with LFE muted が国際基準です。
トゥルーピークのリミッターを全てのオーディオ納品物に対して-2.3に設定することを推奨します。5.1 / 2.0においては、メーター上の些細な相違から誤検出することを避けることができます。アトモスのベッドやオブジェクトにおいては、アトモスレンダラー内の加算要因により、このセッティングは過剰なピークを低減します。
リビングルーム程度の大きさの部屋でニアフィールドミックスをすることを推奨します。それよりも大きな部屋や小さな部屋でも、正しく設計、調整されている部屋であれば問題ありません。ミックスポジションの近くで複数のマイクを使用することで部屋の調整を平均化します。アトモスの部屋は少なくとも7.1.4でなければなりませんが、9.1.6が最適であると言えます。標準のシネマカーブよりは、モデレート、もしくはニアフィール用のLight X-CUrveを推奨します。設備の調整においてサポートが必要であれば、ドルビーのエンジニアが協力します。
変更履歴
2019-04-04
- セクション3からラウドネスの仕様を削除(推奨ではなく、必要要件のため)。
- セクション3に現時点でのテスト済みラウドネスメーターを追加
- セクション3のフルプログラム用LRAガイドを18変更
- セクション3からFXと会話の差に関するLRAガイドを削除
- タイトルをオーディオミックスからサウンドミックスに変更
- オーディオ納品物が撮影・映像ポストプロダクションにおけるフレームレートと一致するという要件に関する詳細を追加
- 実践ガイドとしてモデレートもしくはLight X-Curveの提案を追加