カラーグレーディング:Baselightにおける色管理されたワークフロー
この記事の目的は、正しく色管理されたパイプラインをBaselightの設定を行って構築することで、最終的には非グレーディングアーカイバルマスター(NAM)、グレーディング済みアーカイバルマスター(GAM)、ビデオディスプレイマスター(VDM)を含む品質の高いアセットをNetflixに納品できるようにするためのガイドです。
この記事の手順は要件ではありませんが、推奨される方法です。以下にACESワークフローとカメラネイティブワークフローの2種類を記しますが、色管理されたワークフローのあらゆる可能性を全てカバーしているわけではないことをご了承ください。
このガイドはBaselight 5.1に合わせて作成されたものです。
ACES ワークフロー
ACESに馴染みがない場合は、Academy Color Encoding System(米国映画芸術科学アカデミーの策定したカラーエンコーディングシステム)についての情報をACES Central ウェブサイトから得ることができます。
シーン設定
Job Managerで新しいシーンを作成します。ACES TemplateをScene Templateとして選択します。これにより、自動的にWorking Colour SpaceにACEScct: ACEScct / AP1 が選択されます。特別な理由があってACESccに変更する以外は、この設定はそのまま使用してください。
Working Format の解像度はUHD, 4K またはそれ以上の解像度であることを確認します(Netflixから認証されている解像度がある場合を除く)。フレームレートはIMFやVDMの納品フレームレートと同じものを選択します。
シーンを作成したら、Views > Scene Settings を開き、色に関する設定が以下と一致するかを確認します:
Views > Cursors から、Viewing Colour Space をリファレンス用モニタと同じ設定にします。例えば、SDRグレーディングを行っている場合はRec.1886: 2.4 Gamma / Rec.709になります:
Viewing Format はIMFやVDMの納品解像度に設定します。
Colour Space Journeyの設定
ここから、メディアをシーンにコンフォームしたり追加します。Views > Colour Space Journey を開き、以下のようになっているかを確認します:
重要なのは、Working Colour Space が ACEScct になっていて、ACES RRT (“converted with family DRT” とは、自動的に選択されたことを意味します) を使ってViewing Colour Space に変換されていることです。上記の例では、ソースはACES アーカイブファイルです (リニアエンコードされたOpenEXR)。
もしこれが1000ニッツのリファレンス用モニタ上で行うDolby Vision グレーディングの場合は、同じショットの Colour Space Journey は次のようになります:
多くの場合、実際のソースはオリジナルカメラRAW素材になるので、Baselight が自動的に定義された色空間にディベイヤーされ、最大限の情報を引き出せるようにします。例えば、ソースメディアがソニーのカメラであれば、Colour Space Journey は次のようになります:
Scene Settings で有効にしたPrefer Automatic/From Metadata セッティングが自動的にソニーの素材をリニアのカメラネイティブスペースにディベイヤーします。その後、Baselight はイメージをACEScct: ACEScct / AP1 に変換し、グレーディング操作はここで行われます -- それが、Colour Space Journey に Graded In という欄がある理由です。
デリバラブルのレンダリング
デリバラブルをレンダリングする準備ができたら、 Views > Render を開きます。Netflixへの納品用に新しいデリバラブルセットを作る方がいいでしょう。
Netflixに納品する必要があるデリバラブルはプロジェクトのコンンテンツハブページに指定されたものだけです。但し、ここではNetflixへ納品可能性のあるものを全て列挙します。
Renderビューからデリバラブルタブを全て削除します。Deliverable Set > Define New Deliverable Set に移動します。わかりやすいよう、Netflix Deliverablesと名前をつけます。
最初のタブをNAMに名前変更します。非グレーディングアーカイブマスターを作成するには、以下のレンダリング設定を行う必要があります:
追加で、NAMの場合は色に影響するレイヤーが何も含まれていないことを確認してください。Transform やPan & Scan のような、変換や空間のみに影響する操作はできる限りNAMのレンダリングに含めて下さい。
このタブをコピーし、複製した方をGAMと名前変更します。“Layer/Track” をデフォルトにリセットすることを忘れないでください。グレーディング済みアーカイブマスターを作成するには、以下のレンダリング設定を行う必要があります:
このタブをコピーし、複製した方をDolby Vision VDM と名前変更します。以下のレンダリング設定であることを確認します:
このタブをコピーし、複製した方をSDR VDM と名前変更します。SDR Video Display Master の場合は、以下のレンダリング設定であることを確認します:
各デリバラブルに対して、上記以外の設定は全てデフォルトのままにしておきます。フォルダ構造とファイル命名規則についての詳細は、"Content Hub - Preparing Picture Mastering Assets"を参照してください。
カメラネイティブワークフロー
カメラネイティブワークフローは、プロジェクトのプライマリカメラのメーカーが設計した色空間と伝達関数を使用することになります。このガイドでは全てのカメラメーカーについて触れるわけではありませんが、代わりに幾つかの例も含めてこのワークフローに対応できるようにシーンを準備する手順を示します。
Baselight を起動する前に、FilmLightのウェブサイトの このページ を確認し、使用するカメラメーカーに関連する追加ファイルを全てダウンロードしておきます。Truelight のカラースペースファイル (.flspace) やディスプレイレンダリングトランスフォームファイル (.fltransform 及び .cub) も含め、必要なファイルは全てBaselightの次のディレクトリ内に保存します:
/vol/.support/etc/colourspaces
シーン設定
Baselight を起動したら、Job Manager で新しいシーンを作成します。Working Format の解像度はUHD, 4K またはそれ以上の解像度であることを確認します(Netflixから認証されている解像度がある場合を除く)。フレームレートはIMFやVDMの納品フレームレートと同じものを選択します。
Working Colour Space はログエンコードされたカメラネイティブカラースペースに設定し、名前はカメラメーカーの名前をつけます。例えば、パナソニック製のカメラで撮影した場合は、Panasonic: V-Log / V-Gamut を選択します。ソニー製カメラの場合は、Sony: S-Log3 / S-Gamut3.Cine を選択することもあります。カメラによって設定を変えますが、基本的な考え方としては、色の再現はカメラのセンサーに対して忠実に行い、画像はダイナミックレンジを保持し、従来のグレーディングツールとなじみの良いログエンコードすることです。
シーンを作成したら、Views > Scene Settings を開き、色に関する設定が以下と同じようになっているかを確認します。Working Colour Space と Display Rendering Transform は使用したプライマリカメラに合わせてプロジェクトごとに変わります。以下の例では、REDをプライマリカメラとして使用しています。
注: Dolby Vision グレーディングを行う場合は、Displaying Rendering Transform にSDR版とHDR版が存在するということを意味する“family DRT”を示すこのアイコンがあることを確認します:
Colour Space Journey
ここから、メディアをシーンにコンフォームし、追加します。Views > Colour Space Journey を開き、メディアが自動的に定義した色空間にデコードされ、ログのWorking Colour Space に変換されていることを確認します。合わせて、Display Rendering Transform が自動的に選択され、ディスプレイリファードのViewing Colour Space に変換されます。ARRIRAW素材を使った例は以下の通りです:
これが1000ニッツのリファレンス用モニタで行われるDolby Vision グレーディングの場合は、同じ素材のColour Space Journey が次のようになります:
Scene Settingsにおいて有効にしたPrefer Automatic/From Metadata 設定が自動的にARRIの素材をリニアのカメラネイティブスペースにディベイヤーします。Baselight が続けて画像をARRI: LogC / Wide Gamut に変換し、ここでグレーディング操作が行われます --それが、Colour Space Journey に Graded In という欄がある理由です。
デリバラブルのレンダリング
デリバラブルをレンダリングする準備ができたら、 Views > Render を開きます。Netflixへの納品用に新しいデリバラブルセットを作る方がいいでしょう。
Netflixに納品する必要があるデリバラブルはプロジェクトのコンンテンツハブページに指定されたものだけです。但し、ここではNetflixへ納品可能性のあるものを全て列挙します。
Renderビューからデリバラブルタブを全て削除します。Deliverable Set > Define New Deliverable Set に移動します。わかりやすいよう、Netflix Deliverablesと名前をつけます。
最初のタブをNAMに名前変更します。非グレーディングアーカイブマスターを作成するには、以下のレンダリング設定を行う必要があります:
追加で、NAMの場合は色に影響するレイヤーが何も含まれていないことを確認してください。
Render Colour Space にはカメラメーカー名が入ります。例: Sony: Linear / S-Gamut3.Cine
このタブをコピーし、複製した方をGAMと名前変更します。グレーディング済みアーカイブマスターを作成するには、以下のレンダリング設定を行う必要があります:
このタブをコピーし、複製した方をDolby Vision VDM と名前変更します。以下のレンダリング設定であることを確認します:
このタブをコピーし、複製した方をSDR VDM と名前変更します。SDR Video Display Master の場合は、以下のレンダリング設定であることを確認します:
各デリバラブルに対して、上記以外の設定は全てデフォルトのままにしておきます。フォルダ構造とファイル命名規則についての詳細は、"Content Hub - Preparing Picture Mastering Assets"を参照してください。