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適切なデイリーの重要性

デイリーは撮影現場とポストプロダクションの橋渡しをする存在です。デイリーの作業では、作品の関係者同士で日毎に収録された音声や映像データすべてを確認し、画と音に適切な処理を施して出力します。

プロデューサー、監督、撮影監督、エディター、その他のメインスタッフはデイリーを基に創作的な決断や技術的な判断を行うため、適切なデイリーを作ることがとても重要になります。デイリーの工程で問題があると、撮影現場とポストプロダクションの両方で作業に遅れが生じたり、追加の費用がかかったりする場合があります。プリプロダクションの段階でデイリー作業の綿密な計画を立てておけば、問題を最小限にとどめることができます。

デイリーの仕事は複数のチームで責任を担います。現場スタッフ、編集、視覚効果 (VFX) 、最終グレーディング、デイリーの各チーム間の連絡と計画があって初めて、適切なデイリーの作成が実現します。この記事では、プリプロダクションの段階で各チームが取り入れるべきデイリーのワークフローを説明します。そして、デイリーチーム向けにデイリー作業の推奨ワークフローの概要をまとめます。これらの推奨ワークフローに倣うことで、よくある落とし穴や操作ミスを回避することができます。

注意: この記事は、ワークフローやデイリーの、一般的かつ現時点で有効なワークフローについて説明しています。時が経てば技術が発展し、クラウドベースのワークフローが採用されることで、本記事で取り上げる方法 (アップロード、インジェスト、アーカイブ、音の同期、デイリーのレンダリングなど) の多くが効率化され、業界全体で自動処理が活用されるようになるでしょう。これにより、制作全体における協同作業がより活発になり、何よりも各チームの創作時間を増やすことにつながります。ここで述べた新しいワークフローの安定性や信頼性が高まっていけば、デイリーなどの多くのポストプロダクションに要求される作業に対して、業界でクラウドを優先したワークフローを採用するようになることが期待されます。

Netflixは主な制作関係者と協力しながら、作品固有のワークフローの構築を支援しています。作品固有の事項について質問や心配な点がある場合は、Netflix担当者までご連絡ください。

 


 

目次

プロジェクトの立ち上げ

機材と技術的な準備事項

デイリーの作業

 


 

プロジェクトの立ち上げ

適切なデイリーはプロジェクトの立ち上げ段階から始まります。このセクションでは、デイリーのパイプラインを確立するための、重要なステップについて説明します。

ワークフローミーティング

プリプロダクションで行うワークフローミーティングは、さまざまなチーム間で作品の技術要件について話し合う絶好の機会です。ワークフローミーティングには、撮影監督、ポストプロダクションプロデューサー、エディター、デジタルイメージングテクニシャン (DIT)、録音チーム、VFXプロデューサー、担当カラリスト、担当サウンドエンジニア、デイリー技術者などのスタッフが参加するものとします。

ワークフローミーティングを行ったら、制作の流れや技術的な選択事項について、明確な計画を作成します。その後、制作チームと協力してワークフローメモを作成します。

ワークフローメモ

ワークフローメモには、作品における制作の流れや技術事項に関する計画を詳しく記載し、制作に携わる各チームが不安や混乱なく作業を行えるようにします。ワークフローメモには、以下のような重要な決定事項を記載します:

  • 使用するカメラ
  • 映像の解像度
  • 画角調整の必要性
  • アスペクト比
  • 完成作品のフレームレート
  • 音のフレームレート
  • 音のサンプルレート
  • データ管理プラン
  • カラーマネジメントプラン
  • 編集素材およびクリエイティブレビュー納品の仕様

ワークフローメモは、デイリー、編集、VFX、最終グレーディングの各チーム、そして、制作の中で参考になると考えられるその他すべてのチームと積極的に共有してください。

ワークフローメモの内容例はこちらで参照できます。

 


 

機材と技術的な準備事項

機材準備では、各チームが使用する機材のセットアップやテストを行うことで、ワークフロープランを具現化していきます。デイリーチームは撮影現場に出るチーム、編集、VFX、最終グレーディングの各チームと協力し、映像の受け取りを始める前にデイリーのシステムを適切に構築しなければなりません。

カラーマネジメントプラン

カラーマネジメントプランがあることにより、デイリーで作成する納品物が確実に現場の制作意図に沿うものとなります。ワークフローメモにはカラーマネジメントプランを記載し、デイリーのオペレーターがカラーデシジョンリスト (CDL) やルックアップテーブル (LUT) をデイリーの納品物に適用する必要があるかを指定してください。適用する色補正がポスプロで使用される各ソフトウェアで再現できるように、デイリーではプライマリー補正 (CDLや作品用LUTを利用) だけの使用をお勧めします。撮影現場で "セカンダリ" の色補正 (パワーウィンドウやトラッキングなど) を追加しても、セカンダリの情報が必ずしも他のソフトウェアに引き継がれるわけではなく 、デイリー作業でセカンダリのデータが正確に再現されない可能性があるので注意してください。可能な限り、現場とデイリーの色情報は、ポスプロのどの工程でも確認や再現ができるようにし、創作的な意図が保たれるようにしてください。

カラーマネジメントの詳細は、以下を参照してください:

一般的にこの業務に関わる役職と担当チーム:

この業務の専門家: DIT (オンセット)、DIT (ニアセット)、グレーディング担当会社/最終グレーディングチーム

主要な関係者: 撮影監督、編集チーム、デイリーチーム、グレーディング担当会社/最終グレーディングチーム、VFXチーム

この業務の担当を共有するチーム: グレーディング担当会社/最終グレーディングチーム、デイリーチーム、VFXチーム、編集チーム

 

モニターの設定とキャリブレーション

現場でもデイリーにおいても、キャリブレーション済みの正確な色が表示されたモニターで作業することが重要です。適切なカラーマネジメントを行えば、ポストプロダクションやそのほかのいかなる制作工程においても一貫して創作意図が維持されます。画の基準となるモニターを定め、デイリーで使うモニターのキャリブレーション精度を評価する際に比較対象として使用してください。モニターによって、キャリブレーションターゲットの近くに収まる場合もあれば、かけ離れている場合もあります。撮影期間の途中で、キャリブレーションを見直すことも必要です。

モニターの設定とキャリブレーションについての詳細は、以下を参照してください:

一般的にこの業務に関わる役職と担当チーム:

この業務の専門家: DIT (オンセット)、DIT (ニアセット)、グレーディング担当会社/最終グレーディングチーム

主要な関係者: 撮影監督、編集チーム、スタジオ、撮影チーム、制作チーム、レンタル会社

この業務の担当を共有するチーム: グレーディング担当会社/最終グレーディングチーム、デイリーチーム、VFXチーム、編集チーム、現場モニター担当

 

フレーミングチャート

機材準備の際に、撮影チームがフレーミングチャートを撮影するのが一般的な流れです。そうすることで、意図した通りの画角を達成するセンサー設定とレンズの組み合わせが見つかります。ピクセル単位で作成可能な、精細なデジタルフレーミングチャートを大判用紙に印刷し、作品で使用するカメラで撮影します。デジタルフレーミングチャートと、撮影したチャートの収録素材の両方を、デイリー、編集、最終グレーディングの各チームと共有して、収録映像のサイズ調整の参考資料としてください。

フレーミングチャートの作成と活用方法についての詳細は、以下を参照してください: フレーミングチャートのベストプラクティス

 

一般的にこの業務に関わる役職と担当チーム:

この業務の専門家: 撮影監督、DIT (オンセット)、DIT (ニアセット)

主要な関係者: 撮影監督、編集チーム、スタジオ、撮影チーム、制作チーム、VFXチーム、グレーディング担当会社/最終グレーディングチーム

この業務の担当を共有するチーム: 撮影チーム、デイリーチーム、VFXチーム、編集チーム、グレーディング担当会社/最終グレーディングチーム

 

タイムコードシンクジェネレーター

撮影および録音チームは、機材準備の際に、計画段階で選択したタイムコードジェネレーターが各種カメラ、オーディオレコーダー、スマートスレートと互換性があり、正しく機能することを確認してください。タイムコードシンクジェネレーターを適切に使用することで、デイリーでの音と画の自動同期処理がしやすくなります。その結果、現場から最終納品までのワークフローがより効率的になります。

録音チームの技術的な準備についての詳細は、以下を参照してください: 同時録音の推奨ワークフロー

 

一般的にこの業務に関わる役職と担当チーム:

この業務の専門家: 録音技師、撮影チーム

主要な関係者: 録音チーム、撮影チーム、 DIT (オンセット)、編集チーム、スタジオ、制作チーム、レンタル会社

この業務の担当を共有するチーム: DIT (オンセット)、録音チーム、撮影チーム、制作チーム

 

データ管理

ワークフローメモには、オリジナルカメラファイル (OCF)、音声ファイル、その他特定メディアのアーカイブをデイリーチームが担当するかどうかを明記してください。ワークフロー文書には、デイリーラボによるファイルの保管方法についても記載してください。一般的な保管形式には、RAIDストレージ、LTO、コンテンツハブなどがあります。

データ管理プランの一環として、撮影チームと録音チームは、それぞれの収録メディアの再フォーマットの承認を得るまでの正確で分かりやすい手順を共有してください。デイリーチームがメディアのアーカイブを担当する場合は、デイリーチームもこの一連の流れに含まれます。データ管理の責任が明確でないと、深刻な結果を招く可能性があります。撮影したシーンの素材や音声ファイルがすべてなくなる可能性もあります。

データ管理プランには、重複するファイル名称を変更するためのルールを定めてください。非認定カメラの中には、カメラロール、サウンドロール、クリップに固有の名称を生成しないものがあります。その結果、メディアのファイル名が重複することになります。ファイル名が重複していると、後に控えているVFXやグレーディングの仕上げなどの工程で深刻な問題が生じるおそれがあります。

データマネージャーやデイリーのオペレーターは編集チームと協力し、ファイル名変更のルールを定めてください。変更ルールには、オリジナルファイル名の前または後ろに固有の識別子を付けたものを含めてください。また、カメラロールと日付も含める必要があります。

例: [カメラロール]_[クリップ名]_[日付 (YYMMDD)]

変更前 - 重複するファイル名:

  • 1日目
    • Clip001.mp4
    • Clip002.mp4
    • Clip003.mp4
  • 2日目
    • Clip001.mp4
    •  Clip002.mp4
    • Clip003.mp4

       

変更後 - 固有のファイル名:

  • J001_Clip001_210323
  • J001_Clip002_210323
  • J001_Clip003_210323
  • J002_Clip001_210324
  • J002_Clip002_210324
  • J002_Clip003_210324

制作チームとデイリーチームは話し合いの上、重複するファイル名を現場で変更するか、デイリーラボで変更するかを決めてください。この追加作業がデイリーの作業時間に影響を与える場合は、制作チームにその旨を伝えてください。

オリジナルソースファイルの破損や紛失のリスクを減らすため、ファイル名変更の前にオリジナルファイルのコピーを作成することを推奨します。複製したファイルを保管し続けることでストレージが圧迫されるのであれば、デイリーチームはすべての複製ファイルがソースと同じであることを確認し、複製されたメディアの 技術QCを実施した後に、オリジナルメディアを削除してください。

 

ドライブの引き渡しと収録メディアの消去承認

デイリーチームは機材準備の際、撮影現場でデータのバックアップを管理する担当者とも連絡を取ってください。その際、ドライブの引き渡し方法とチェックサム/ハッシュの種類を明確にしてください。収録メディアの再フォーマット承認手順についても、再度確認しておきましょう。明確で一貫性のあるフォルダ構造やファイル命名規則について合意を得ておくことも大切です。

データ管理の詳細は、以下を参照してください:

一般的にこの業務に関わる役職と担当チーム:

この業務の専門家: DIT (オンセット)、DIT (ニアセット)、データマネージャー、データーローダー

主要な関係者: 撮影チーム、録音チーム、デイリーチーム、グレーディング担当会社/最終グレーディングチーム、ポストプロダクションスーパーバイザー

この業務の担当を共有するチーム: ポストプロダクションスーパーバイザー、制作チーム、デイリーチーム、グレーディング担当会社/最終グレーディングチーム、スタジオ

これらの技術的な準備業務の現場での進め方について、また各業務の担当者についての詳細は、以下を参照してください: オンセットのデジタルイメージングとデータ管理: 役割と業務範囲

 

編集素材およびクリエイティブレビューの納品物

デイリーチームは機材準備の際、制作チームやポストプロダクションチームから要求される納品物をしっかり把握する必要があります。納品物の仕様はクリエイティブレビューのプラットフォームや編集の機材環境 (ストレージ容量、転送速度、モニタリング環境など)、作品のワークフローにより異なります。編集素材とクリエイティブレビューの納品物については、ワークフローメモで以下の項目を規定してください:

  • 納品ファイルの仕様
    • コーデック
    • 解像度
    • フレームレート
      • 可変フレームレートと、オフスピード (ハイスピードやスローモーション) フレームレートの素材の処理計画を記載してください。
  • フレーミング
    • OCFに適切な黒帯をのせて、映像が作品で使用するアスペクト比になるよう、フレーミングチャートをデイリーチームに提供してください。
  • 焼き付け
    • 編集素材またはクリエイティブレビューの納品物に、焼き付けが必要な場合、情報の焼き付け位置を定めてください。
    • プロキシの映像に情報を焼き付ける場合、可能であれば有効な映像領域の外側に配置してください。焼き付けの要件について不明な場合は、制作チームからNetflix担当者に連絡してください。

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      図A: 有効な映像領域の外側に焼き付け情報のある編集素材の例

      • 編集プロジェクトとビン
        • 編集チームはプロジェクト/ビンについて、クリップの命名規則と整理方法を定めてください。
          • 編集チームがプロジェクト/ビンの代わりに、AAFまたはXMLの受領を希望する場合もあります。
      • 納品方法:
        • クリエイティブレビューのデイリーについては、デイリーのアップロード先プラットフォーム、デイリーの整理方法、レビューへの配信方法についてワークフローメモに記載してください。
        • 編集のデイリーについては、メディアの納品をポイントツーポイント (直通回線) 接続で行うのか、ハードドライブで引き渡すのか、その他の方法をとるのかを、ワークフローメモに記載してください。

一般的にこの業務に関わる役職と担当チーム:

この業務の専門家: 編集チーム、デイリーチーム

主要な関係者: スタジオ、プロデューサー、撮影監督、編集チーム、デイリーチーム

この業務の担当を共有するチーム: 編集チーム、デイリーチーム

 


 

デイリーパイプラインのテスト

プロジェクトの立ち上げと、機材準備が完了したら、デイリー作業の計画に沿ってカメラテストとフレーミングチャートの映像をレンダリングし、撮影後の工程を担う各チームに納品します。これにより、画や音のパイプラインが計画通りに機能することが確認でき、クランクイン前に潜在的な問題の発見と対応が可能になります。

一般的に、パイプラインテストでは以下の項目を確認します:

  • オリジナルカメラファイル (OCF)
  • オリジナル音声ファイル (OAF)
  • 編集素材およびクリエイティブレビューのプロキシ
  • 色情報およびメタデータ (LUT、CDL、ALE)
  • グレーディングのリファレンス用静止画像
  • プロジェクトのバックアップファイル
  • VFX出しのサンプル

各チームはこのパイプラインテストに積極的に参加し、最終パイプラインの承認を行ってください。テストの結果、パイプラインまたは制作の計画に変更が生じた場合は、変更点を反映するようワークフローメモを更新してください。

 


 

デイリーの作業

準備が完了したら、撮影が始まり、これまでの計画の成果が得られます。ここからがデイリーの作業の始まりです。

このセクションでは、デイリーチームがデイリーの作業で通常行うステップの概要を説明し、この工程における推奨ワークフローを提示します。

全体の概要

実際のデイリーの作業の順序は作品により異なりますが、何らかの形で以下の工程を必ず含むものとします:

  1. メディアのインジェストと検証
  2. デイリーソフトウェアを使用したメディアの処理
  3. 技術QC
  4. 納品物のレンダリング
  5. 日報メールの送信

これらの工程は同時進行の場合もあります。たとえば、あるカメラロールを納品に向けてレンダリングしている間に、音の同期処理や、次のカメラロールの処理へと進むことも可能です。デイリーチームがワークフローに慣れるにつれて、並行して複数の業務を行えるようになります。

1. メディアのインジェストと検証

メディアが現場から届いたら、ワークフローメモの要件に沿ってすべてのアセットのインジェストとバックアップを行います。チェックサム検証を行い、データの整合性を確認します。

メディアが安全にコピーされたら、映像ファイルと音声ファイルを指定のデイリーソフトウェアに読み込みます。制作チームによる早急な対応を必要とする、あるいはデイリーの作成を妨げるおそれのある、緊急性のある技術的問題がないかどうか、撮影素材を目視で検査、確認します。

また、メディアをスクリプトシートやカメラレポート、サウンドレポートなど、現場からのレポートと突き合わせて素材を確認します。これらのレポートに報告のないメディアの紛失または破損がある場合は、即座にデイリーのオペレーターから制作チームに報告し、日報メールでも再度報告してください。

非標準メディアの扱い

インジェストや検証の段階で、ワークフローメモで指定された仕様とは違う、想定外のメディアや映像が見つかる場合があります。そのような例としては以下が挙げられます:

  • 可変フレームレート、または計画や指示とは異なるフレームレートで撮影された素材
  • 計画や指示とは異なる圧縮設定で撮影された素材
  • ワークフロー文書で指定されていない代替カメラで撮影された素材 (iPhone、GoProなど)
  • ワークフロー文書の仕様とは違う音声ファイル

デイリーチームが非標準フォーマットのメディアを発見した場合、オペレーターが中間ファイルを作成する場合があります。中間ファイルとは、作品のワークフロー仕様に準拠するようレンダリングし直した、非標準のオリジナルファイルをトランスコード (変換) したものです。中間ファイルは作成以降、対象アセットの新しいマスターとなるものであり、デイリーの納品物作成にはこれを使用します。中間ファイルはOCFとともに、長期アーカイブ用 (LTO、コンテンツハブなど) にバックアップを取ってください。

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図B: 非準拠のOCFは中間の “新マスター” としてレンダリングされた後、デイリーソフトウェアで処理され、編集素材としてレンダリングされます。

中間ファイルの作成

中間ファイルを作成する際、元の映像の品質を維持しながら、OCFの問題点だけを修正することが目標になります。そのため、変換の対象となる素材によって、異なるファイル形式を使用する必要があります。変換作業の際に考慮すべき要素としては、以下が挙げられます:

  • 映像
    • ビット深度
    • 色空間
    • ソースファイルの解像度
    • フレームレート
  • 音声
    • サンプルレート
    • ビット深度
    • iXML/Bextメタデータの維持

色空間、解像度、フレームレートは、できればソースの映像に対して1:1の関係になるように変換してください。非標準の映像のフレームレートが一定でない場合は、デイリーチームでその映像の撮影レートを特定し、一定のフレームレートを中間ファイルに “焼き付ける” 必要があります。

中間ファイルの作成にあたり、推奨する仕様は以下の通りです:

色空間*

ガンマ*

オリジナルファイルのビット深度

中間ファイルのフォーマット

シーンリファードな色空間

(つまり、カメラ固有の色空間)

ログ 10ビット以上 16ビットのDPX (.dpx)
10ビット以下 10ビットのDPX (.dpx)
リニア 10ビット以上 非圧縮

16ビットハーフ浮動小数点数

OpenEXR (.exr)

ZIP (可逆圧縮)

16ビットハーフ浮動小数点数

OpenEXR (.exr)

PIZ (可逆圧縮)

16ビットハーフ浮動小数点数

OpenEXR (.exr)

ディスプレイリファードな色空間 (sRGB、Rec.709、P3-D65) 2.4、PQ 10ビット以下 Quicktime Prores 4444

*オリジナルファイルから中間ファイルを生成する際、色空間およびガンマは変更しないこと。

 

中間ファイルはオリジナルファイルに近い名前を付けます。オリジナルファイル名をそのまま残し、中間ファイルだとはっきり識別できるような拡張子を付け足してください。

例:

  • ソースファイル: G001C001_210819
  • 中間ファイル: G001C001_210819_int

注意: コンテンツハブを使用するプロダクションで中間ファイルを新たに作成する際には、新しいMHLを作成しインポートしてください。

 

2. デイリーソフトウェアを使用したメディアの処理

デイリーチームが必要なファイルすべてを指定のデイリーソフトウェアに読み込めたら、ワークフローメモやフレーミングチャートに基づいて映像の画角調整、音の同期、メタデータの追加、カラーメタデータの適用などの作業を開始できます。

画角の調整

各カメラのセンサー解像度で収録された映像を、機材準備で作成したフレーミングチャートに従って画角を調整してください。個々の調整要件に注意してください。編集素材には、クリエイティブレビューの納品物とは異なる画角の調整が必要になることもあります。詳細はワークフロー文書を参照してください。

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図C: 撮影されたOCFフレーム (4448x3096 -1.44:1) 内に、5%のセーフティ枠を付けた有効な映像領域の例 (4226x2114 - 2.00:1)。

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図D: デイリー用HDコンテナ (1920x1080 - 1.78:1) に配置された有効な映像領域の例 (4226x2114 - 2.00:1)。

画と音の同期

ほとんどのデイリーソフトウェアは、収録素材に埋め込まれたタイムコードを使って、複数の映像ファイルを対応する音声と自動で同期することが可能です。タイムコードのずれや現場での不適切なジャムシンクにより、画音の同期が失敗することがあります。その場合、デイリーのオペレーターが映像を操作して同期点を調整しなければなりません。自動で同期できないファイルについてはデイリーのオペレーターが手動で同期を行ってください。音無しのクリップについては、編集のメタデータ (ALE、ビン、AAFなど) でクリップに音がないことが分かるようにしてください。

ソフトウェアの中には、"スクラッチトラック" (音質の低いカメラマイクの音) の波形をオリジナル音声ファイル (OAF) の波形とマッチさせることができるものもあります。複数のファイルのタイムコードに問題があり、スクラッチトラックが存在する場合には、この手法を使用することで同期にかける時間を節約できます。

タイムコードの問題が生じた場合は、以下の目的のために、日報メールにて制作全体に問題を報告してください:

  • 翌日以降、上がった問題に対応するため
  • デイリー作業の遅延を防ぐため
  • 後に控えている画音の仕上げでの問題発生を防ぐため

色の適用

デイリーのオペレーターはワークフロー文書を参照し、カラーパイプラインをデイリーに正しく適用してください。必要なCDL値やLUT (出力または入力) をデイリーに適用し、後の工程を担当するチームのために、メタデータに記録してください。

メタデータの同期

現場からのメタデータはすべて編集素材に適用し、後の工程でオフライン編集を元素材にコンフォームできるようにしてください。関連するスクリプトシート、カメラレポートやサウンドレポート、重要なVFXメモについても、編集素材のメタデータに追加してください。

画音の仕上げにおいて重要なメタデータとして、以下が挙げられます:

  • テープ名 (別称リール名)
  • ソースタイムコード
  • 開始タイムコード
  • 終了タイムコード
  • サウンドロール
  • サウンドタイムコード
  • 音声トラックマッピング
  • カラーメタデータ (CDL、LUTなど)
  • レンズのメタデータ

3. 技術QC

デイリーソフトウェアでOCFを準備したら、オペレーターがタイムラインを動かして技術的な問題がないかを確認しながら、各クリップのスポットチェックを行うのが理想的です。この技術QCは、制御された暗い視聴環境で、小さくても4Kまでの収録解像度に沿ったディベイヤーにて行ってください。レビュー用モニターは、デイリーの色空間を完全に再現でき、かつ機材と技術的な準備事項での説明通りに業務用にキャリブレーションされたものを使用してください。

技術的な問題は編集メタデータに記録し、後の工程を担当するチームに引き継いでください。また、日報メールで制作全体に報告してください。技術的な問題でよくあるものとしては、以下が挙げられます:

  • 映像
    • センサー異常やノイズ
    • 映像のバンディング
    • CMOSセンサーの汚れ
  • 音声
    • RF干渉
    • ファイル破損

画の中にバレ (ブームマイク、スタッフの映り込みなど) がある場合、編集メタデータと日報メールに記録してください。

4. 納品物のレンダリング

編集素材およびクリエイティブレビューの納品物は両方レンダリングし、QCを実施した上で、(別段の合意がない限り) 毎日の撮影終了から12時間以内にすべての関係者に送信してください。必ずワークフローメモを参照し、各納品物の種類ごとに、ファイル形式、画角、フレームレート、焼き付けが正しいことを確認してください。

編集素材の納品

編集素材の納品に含まれるものは、以下の通りです:

  • 編集用プロキシ
  • オリジナル音声ファイル
  • AVID Log Exchangeファイル (ALE)
  • プロジェクトまたはAVIDのビンファイル、もしくはその両方 (画音を同期し、命名規則に沿ったクリップと同時に納品)。
  • 以下をはじめとする、撮影日ごとのレポート:
    • データ管理レポート
    • カメラレポート
    • サウンドレポート
    • QCレポート (オンセットおよびデイリー)
    • スクリプトシート

編集用プロキシファイルの処理

編集素材をレンダリングしたら、新しく作成したファイルのQCをしてください。よくある問題として、以下が挙げられますので注意してください:

  • メタデータ: 編集用ファイルのヘッダーに組み込むメタデータは、OCFに関連づけられている必要があります。
  • 正しいコーデックまたはラッピング: ファイルは指定の編集ソフトウェアで問題なく開くことができる必要があります。
  • 映像および音声の問題: ファイルに異常やノイズなどがないか、スポットチェックする必要があります。
  • 色の間違い: LUTやCDLが正しく適用されている必要があります。
  • 画角の間違い: マスキング (黒帯) が正しく適用されている必要があります。
  • 音声ファイルの不足: 多重化ファイルの音声が正しくレンダリングされているかチェックする必要があります。すべての音声MXFファイルが適切なフォルダに保存されているか確認する必要があります。

編集用プロジェクト/ビンの内容も、編集ソフトウェアを使用して以下の要領で確認してください:

  • 各クリップをスクリプトシートやカメラレポートと突き合わせて確認する。
    • すべてのクリップがBIN内に見えていることを確認する。
    • クリップに適切な名称が付けられていることを確認する。
  • 編集用プロキシが正常にリンクしていることを確認する。
  • ALEを介してメタデータ欄が正しく入力されていることを確認する。

編集用プロキシの納品方法

編集素材はすべて、共有されたワークフロー文書で定めた方法およびフォルダ構成にて、ポストプロダクションチームに納品してください。何らかの理由で納品が遅れる場合は、オペレーターからポストプロダクションチームに連絡をしてください。

クリエイティブレビュー用のデイリー

クリエイティブレビュー用のデイリーをレンダリングしたら、ワークフロー文書で指定のレビュープラットフォームに転送し、作品で決められた要領に応じて整理してください。アップロード後、素材をチェックし、すべてのファイルがプラットフォーム上で問題なく再生できることを確認してください。

5. 日報メールの送信

すべての納品物の処理、納品、QCが終了したら、オペレーターから制作全体に最終メールを送信します。メールに記載する内容は以下の通りです:

  • すべてのプロダクションアセットについて、ワークフロー文書に定められたデータ管理プランに従い、安全にバックアップが取られていることの確認
  • 足りないアセットがないことの確認
  • すべての納品物とアセットの納品状況
  • 現場からのレポート (カメラ、録音、スクリプター、DITなど)
  • 撮影日レポートまたはクリップレポート (デイリーソフトウェアでエクスポートされた場合)
  • QCで見つかった技術的な問題について説明するメモ

事前に計画を立て、チーム間のコミュニケーションを継続することにより、デイリーにおける問題を最小限にとどめ、後の工程での遅延を防ぐことができます。適切なデイリーの作成は、クランクイン前から始まっており、各チームが互いに協力しあうことで成功します。

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